「仕事始め」

あけましておめでとうございます。昨年は先の見えない状況が続く中、自分たちに向き合い、出来ることを考え、大切なものを見つめ直す日々となりました。本年も私たちは、暮らしとアートに寄り添いながら、皆様の心がワクワクする作品をお届けできるよう努めてまいります。

本年もどうぞ聡窯・辻をよろしくお願いいたします。

雪の日が続く中、仕事始めは昨年完成したカトラリーレストの原型から、使用型をとる作業。冷たい土と水を使うたび指先が赤くなって動かなくなる感じは、まるで持久走の後と同じ…。

大 堀

「心の余裕の中で・・・」

世界中がコロナ渦に見舞われた2020年… 誰もが、予期しない出来事の数々に翻弄された年だったと思います。個人的にも、上半期全ての展示会等が、中止や延期を余儀なくされ、秋にようやく動き出した個展や企画展も、期待の結果には至らず、外での活動は大変厳しい1年になりました。

年間の1/3を出張し、様々な催事や用件に追われていた例年に比べ、ステイホーム期間も長かった今年はそんな中でも、結果的に色んな事を考えたり試みたり、心の余裕の中でやれてきた一年だったような気がします。

以前から企画してても多忙で出来なかった新たな商品開発。 若いスタッフを中心に、幾度もみんなで議論を重ね、意見を出し合い、作家としての作品制作に加え、窯ブランドの研究開発、試験、制作、ネット強化…。

数年前から工房の環境を提供しながら応援してきた、有田で明日への希望と自らの成長を目指して、ものづくりに取り組む若者たちに対しても、落ち着いた時間の中で、指導したり夢を語ったり、幅広い経験や研修を受けさせてやれたり。

これらもまた、自分に生まれた多くの時間と、気持ちに余裕があった今年だったからこそなんだと、 今、心から嬉しく、そして有難く思う。

まだまだ、先が不透明で不安いっぱいの2021年ですが、 しっかり地に足を付け、全身全霊で一歩ずつ歩く事が出来たなら「いずれ何か付いてくるでしょ♪」ぐらいの気持ちに余裕を持ちながら過ごせる1年にしたいです。

今年も出会い関わってくれた全ての人に感謝申し上げます。

辻 聡彦

  

「青春白書」

大掃除に入る前に、合間を縫って作っていたカトラリーレストの原型が完成しました。シンプルであるが故に、きれいに彫っていくのは難しいのですが、私はレリーフの表現やレリーフタイルが好きなので、楽しく制作できました。

大学時代、私はロクロと絵付けがそれほど得意ではありませんでした。けして怠けているわけではなくて、むしろ真面目すぎるぐらい授業を受けていて、夏休みや冬休み、空いてる時間はずっとロクロや絵付けの練習していたのですが、なかなか成果が現れず…。特に1年生の時は、クラスメイトたちがどんどん前に進んでいくことにも焦りを感じてました。

そんな1年生の冬、「基礎造形」という授業で石膏でレリーフタイルを作る機会がありました。光と影のバランスやタイルの向きなどで表情が変わっていく……仕組みはシンプルなのに、とてもきれいなレリーフタイルに感動したことを今でも覚えています。「ロクロと絵付けはイマイチな私だけど、これは焼物で作りたい。必ず卒業制作で挑戦して結果を出そう」そう心に決めた瞬間でした。

2020年が終わる前に、すごく頑張って、苦しんで、たくさん泣いて、レリーフタイルが好きで、卒業制作にすべてをかけていたあの頃の気持ちを思い出すことができました。来年も再来年もその先も、この気持ちは忘れたくないです。

今年で最後の聡窯通信となりました。皆様 良いお年をお迎えください☆

大 堀

「泉山陶石 鉱脈 視察研修」

卓越した技術を基に、作り手の思いを作品に込める作家の集まりとして『有田陶芸協会』は1981年に発足しました。轆轤の技術から生まれる美、和紙染めや精巧な染付の美、また独自の釉調の美、華やかな赤絵の美など。作家が求める作品の方向性は様々であり、陶芸協会展ではそれぞれの想いがにじみ出ています。

協会では有田焼の原料採掘地へ行く視察研修もあります。先日は聡窯スタッフたちも連れて泉山陶石の鉱脈が見られる各場所を訪れ、みんなで知識を深め合いました。

有田焼の原料は熊本県の天草陶石が主流ですが、かつては陶祖李参平が約400年前に発見した泉山陶石が重用され、江戸時代には佐賀藩が磁石場を管理していました。今回は、同協会の河口純一名誉会長の案内で、有田川ののり面、古木場ダム、中樽の子樽2号窯跡などを見学。私の工房「聡窯」の真横や敷地内にも鉱脈帯が連なっており、鉱脈は英山より南側に広がっている状況を確認することができました。


歴史は、今、この一瞬が作られている出来事であり、未来へと繋がる出来事です。有田の環境・歴史を学び、作家同士で情報を共有し合うこと。それが作陶の励みと、まだ見ぬ未来の作品へ繋がっていくと信じています。

辻 聡彦

有田川ののり面
中樽の子樽2号窯跡

「道具作り」

『道具は自ら作れ』

つて、私がロクロを師事した井上萬二氏から教わった言葉です。そして15年間、窯業大学の非常勤として、ロクロを教えてきた生徒たちにも伝えてきました。師からの細かな技術の伝承・精神論を現代の若者への教えに持ち込む事は好きではなく、あまりそうしないようにしています。ですが、無雑の集中力と道具に対するリスペクト、土に思いを伝える愛情のような作陶への姿勢の大切さは、今も昔も変わらないと思っています。

指導の立場を退いた後は久しくそんな機会も少なくなり、昨今の窯業を学ぶ若い世代も自ら道具を作ることなく、便利な道具や材料が労せず手に入るようになってきたように感じます。この状況に、私の中で何かが引っかかり、モヤモヤが続いていました。井上萬二門下時代から自分で作ったヘラなどの道具は、微調整を繰り返しながら、30年経った今もピッタリと自分の手に馴染んで、土に優しく語り掛けながら意のままに変化していってくれています。

ですがこの数ヶ月、工房に通っている若者に久しぶりにロクロを指導したり、かつて教えていた大学で同じ井上門下生の先輩に指導を仰ぎ、一緒に道具作りを行うことで改めて学びました。技術を習得する前の大切なことを…。

広く勉強したいと意欲満々の彼女も、そんな貴重な体験や自ら作った道具への愛着を感じながら、今後土と向き合っていく事でしょう。

辻 聡彦

「挑戦を乗り越えること」

今週は各自、作品・サンプルの制作に没頭していました。

拓眞氏は、花×器展で展示していた「環」の小さい花器バージョンを制作中。薄くのばし、小さくカットした生地を、テトリスのように積み重ねて接着しながら形状を作り上げています。

聡彦氏は新しい大物作品のサンプルをロクロで制作中。初めて作る形に手応えを感じたり、悩んだり…挑戦することを楽しんでいるように見えました。

そして私は、カトラリーレストの原型を石膏で制作中。ナイフや彫刻刀でレリーフを入れています。

前例のない「初めて」に挑戦することは、時間と勇気が必要です。ですが、「挑戦」を乗り越えた先に、磁器の新しい表現への扉が開かれる。そう信じているから、きっと作家たちは挑戦に立ち向かっていくのでしょう。

大 堀

窯業人材育成事業からお知らせです。

佐賀県窯業技術センターでは、陶磁器産地の次世代を担う新しい人材の育成を目的として、研修期間6ヶ月の一般研修を行っており、令和3年度4月期の研修生募集をしています。

専門技術の習得を目指す「製造技術」、「ろくろ」、「絵付」コースをはじめ、今期から陶磁器製造工程全般の技術を初歩から習得する「基礎」コースが新設され、焼き物未経験者でも挑戦できます。※未経験の方は「基礎」コースでご応募ください。

詳細は佐賀県窯業技術センター公式サイトをご覧ください。

令和3年度一般研修4月期 研修生募集について

「清く、可愛い、箸置きたち」

近年では料理の写真をSNSにアップすることが日常化してきており、特にコロナ渦の中ステイホーム期間が増えたことで、料理を楽しむこと、そして食器の購入者が少しずつ増え始めています。中でも箸置きは器より買い求めやすく、無理に高価なものを揃えなくても、置くだけでテーブルに華やかさ・季節感を演出してくれる重要なアイテムとなっているそうです。

可愛い、写真を撮ったときに華やかになる、きちんとしてる感が出るなど、使い始めや購入するときには、インスタ映えを意識し、またインスタの流行によっては普段の食事でも、お皿1枚選ぶにもバランスを考え、箸置きもこの料理にはこっちの方が映えるかな…と、現代人がコーディネートを考えて選ぶようになってきています。

1枚の写真とコロナが、料理をすることとテーブルコーディネートの楽しさ、そして丁寧な暮らしの大切さに気づかせてくれるきっかけになっていると感じました。また、私たちが清潔に食べ物をいただきながら感染対策を行うためにも、箸置きやカトラリーレストを食卓に取り入れることは大切かもしれません。

大 堀

「器を彩り、花を彩る」

コロナ渦の中始まった「秋の有田陶磁器まつり」今年は検温や消毒などの感染対策を徹底し、春のWEB陶器市に続き、インターネットでも販売するなど、新たなの取り組みが展開されてきましたが、無事に開催することができました。多くの観光客の方が有田を散策している姿を久しぶりに見て、嬉しく感じました。どうか、少しずつでも町と窯業界に活気が戻りますように。

期間中、旧田代家西洋館(有田異人館)にて開催していた「西洋館を彩る花×器展」を見に行きました。

聡彦氏の「躍動」は、絵付けの力強い流れと大きな枯木の組み合わせがとても合っており、迫力がありながら、後ろからのぞかせたかすみ草から小さな生命感も感じ、強弱のある作品に仕上がっていました。拓眞氏の「環」は、ニューサイランなどを背を高くして生けてあり、見ている側も背筋を伸ばしてしまいそうな作品でした。普段、焼き物に関心のない私の両親も「生命を感じる…!」と珍しく感動していました。

器を彩ることが、花を彩ることにつながる…器の中では、とても奥深い世界が広がっているようです。

大 堀

「躍動」辻 聡彦作/草月流
「環」辻 拓眞作/龍生派

「全集中」

ずらりと並んでいる飯碗たち、その数293枚。先週の火曜日からちょうど1週間、みんなで手分けして絵付けや釉掛けを行い、どうにか今日の窯に間に合うことができました。本当に一安心です。そしてこの1週間で私は『全集中、絵付けの呼吸、壱の型、高速濃み!!!!』を習得したはず…。ですが本当に集中したので、手と頭がすごく疲れてしまいました(汗) 鍛錬がまだまだ足りませんが、私は長女のような次女だから出来るはず…!

大 堀

「縮む」

デスクワークが多く、そのせいか腰痛に悩まされる10月となりました。なので今週は久しぶりに飯碗の絵付け作業をしていました(座って作業するのは変わりませんが…)ロクロも絵付けも、腰に負担が掛かってしまう作業なので、窯業界に腰痛は付き物。 これから寒くなってくるので、もっと身体が縮こまらないよう気をつけたいです。

縮むと言えば、焼き物は出来上がるまでに各段階で収縮していきます。その収縮率は、一般に市販されている粘土で12~13%程度。土によっては、備前の土や、磁器土の様に、20%程度も縮むものもあります。そのため出来上がり寸法より、大きく作る必要で、大きな物や長い物は大きく縮みますので、陶芸の初心者はこんなに小さくなるのかとビックリします。又、作る時は大き過ぎると思いがちです。

大 堀