有田。現代陶芸の息吹。【縣有の作陶part1】

 有田で生まれ育った私は、今も昔も多くの陶芸家に囲まれています。皆が卓越した技術を持って独自のスタイルを追求しているのですが、特に絵付け、ロクロの技術には目を見張るものばかりです。その技術で大物作品(大きな壺、鉢、オブジェなど)を制作し、焼き物は会場芸術と発展していきます。詰まるところ、舞台は美術館やギャラリー。そこで行われる展覧会こそが私たちの土俵です。

 ところがその中でも、私が住んでいる近所にとても “おもしろい” 作品を作っていた故・「縣有(あがたたもつ)」さんという作家さんがいました。この “おもしろい” は大げさでも何でもなく、子供が見ても“おもしろい”というのだから、誰もが幼い頃の私のように印象深く思ってくれることでしょう。

 その作品を見たまんまに記述すると、薄く板状に伸ばした粘土板を貼り合わせる「板造り」という技法を用いて作った、真っ白な「建造物のような」作品です。花器としての機能も備わっていますが、まずその造形の細部へと目が向かいます。従来の(当時は戦後。分業制による職人気質が根強く残る。)ロクロ、絵付けにかたどられた有田焼と比べると、とても異質に映っていたことは今でも容易に想像されます。

「県(あがた)さんの作品を見ますと、喜寿のお年とは思はれない人生の詩がきこえ、青春の躍動が感じられます。」

青木龍山
縣有「白塔」(1991) 個人蔵

 閑話休題。聡窯で縣さんの話をするのは唐突のようですが、決してそうではありません。有田の「オブジェ陶芸」思考は縣さんの作陶から始まったと私は思います。その息吹を確かに感じる聡窯で、戦後有田陶芸界のルーツに迫る面白さを感じています。

辻 拓眞

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辻拓眞のブログでは今後も、個人的に陶芸家として自己啓発をしていく中で、気になった出来事や作家さん、作品などを紹介していきます。